第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「・・・こんな高価なもの・・・どうして私に?」
滑らかな真珠の表面は、光の角度によって純白、ピンク、ブルー、グリーン、シルバー、そして虹色とその色を様々に変える。
決して強く自己主張しない石。
しかしその凛とした輝きは、人の目を惹きつけ、深く魅了する。
「ダイヤモンドは太陽の力が宿る“王”の象徴とされてきたが、真珠は月の力が宿る“女王”の象徴とされてきた。おれの隣に置く女にふさわしい石だ」
「・・・それならなおのこと、私はこのネックレスを受け取れません。もっとふさわしい女性が他にいます」
「なんだと?」
クレイオの背中には奴隷の烙印が押されている。
こんなものを背負った女が、“国王”の隣にいていいはずがない。
「お気持ちは嬉しいです。あの時、沈没する船から助けてくださったことも感謝しています。でも、私は“人間以下”の女ですので・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
初潮を迎えてすぐ、クレイオは手術を受けさせられ、一生妊娠ができない身体にさせられた。
間違っても天竜人の子どもを孕まないようにという、至極勝手な理由だった。
奴隷に一切の人権はない。
だって、人間ではないのだから。
クレイオは生まれてから今まで、何一つ“自分の物”を持ったことがない。
この“命”すらもかつては天竜人のもので、今は目の前にいるドレスローザ国王のもの。
「私の身体は天竜人を悦ばせるためだけに造られた、妊娠すらできない肉の塊です・・・だから、このようなプレゼントは・・・」
胸で光る『人魚の涙』は、クレイオの身に余る贈り物だった。