第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「お前に出会ったあとすぐ、おれは海軍本部に向かった」
“1週間後に海軍本部にいく。それだけあれば、ここにいる天竜人の安否を確認する時間も、おれのために七武海の椅子を用意する時間も十分にあるだろう”
政府に向かってそのような条件を突き出したドフラミンゴは、言葉通り、1週間後に海軍本部へ向かった。
「海軍本部の近くに、シャボンディ諸島という島がある。これは、そこにいたガキが持っていたものだ」
“助けてくれたら・・・貴方に『人魚の涙』を差し上げます!!!”
シャボンディ諸島で偶然見かけた、親子。
天竜人に背いた罪で海軍に連行されようとしていた。
娘の方は、おそらく成長したローと同年齢だろう。
なかなか機転の利く娘のようで、ドフラミンゴを見るや幻の宝石と引き換えに助けてくれと懇願してきた。
「その親子の命なんざどうでも良かったが、『人魚の涙』はそうお目にかかれるもんじゃねェ。そいつらの命を救う代わりに手に入れた」
その話を聞いて、クレイオはどこか違和感を覚えた。
ドフラミンゴと出会って日は浅いが、彼は欲しいものがあれば、交換条件など気にせず奪いにいく男であることぐらいは分かる。
わざわざその親子を助けたのは、彼に何か思惑があってのことだろうか。
しかし、そんなことは確かめようもない。
クレイオは一切の言葉を発さず、箱を開けているドフラミンゴの手を見つめていた。
「まさしく幻の宝石・・・『人魚の涙』だ。これはお前が一番ふさわしい」
この世で一番美しい宝石は、この世で一番美しい女が身につけるべき。
そして、自分はその両方を手に入れる。
「高い金を出して加工させたものだ」
ドフラミンゴは箱の中から華奢なネックレスを取り出すと、自らクレイオの首にかけてやる。
「───この真珠の首飾りは、肌身離さずつけていろ」
一粒の美しい真珠が揺れる、純金のネックレス。
それは、ちょうどクレイオの鎖骨下で、柔らかな光を放っていた。