第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
海水や雨水に晒され続けている岩礁は滑りやすく、びっしりと苔で覆われている。
その上をスタスタと歩いていくドフラミンゴを、クレイオはバランスを崩しながら追いかけた。
「下手な航海士じゃ、この岩の存在に気付かず船の横っ腹に当てちまうかもしれねェな」
そう言ってニヤニヤと笑いながら、座り心地の良さそうな出っ張りに腰を下ろす。
そんなドフラミンゴから1メートルほど離れたところで、クレイオはどうしていいか分からずにいた。
「どうした、なぜそこで突っ立ってる?」
そばに来いということか?
でも、どれくらいそばに寄ればいいのだろう。
ドフラミンゴが自分に許す距離を掴めずにいると、急に身体が自分の意思とは関係なしに動く。
「・・・!!」
抵抗する力も出せないまま、まるで操り人形のようにフラフラと歩き、ドフラミンゴのそばまで来ると、大股を広げている右脚の上に強制的に座らされた。
「遠慮することはねェ。シュガーやデリンジャーなんか、いつも気が付けばおれのひざの上に乗っかってるぜ」
けれど、彼らは子ども。
少なくとも見た目は、だが・・・
そもそも、クレイオは誰かに気安く触れることに慣れてはいなかった。
「・・・どうして私をここに?」
360度見渡しても、そこには海しかない。
島も、船も、何もない。
大きな波が来たらすぐに沈んでしまいそうな、こんな岩礁に何故?
「言ったはずだ、お前に渡してェものがあると」
「・・・・・・・・・・・・」
「どうせなら“カゴ”の外で渡したいと思ってな」
ドフラミンゴは笑いながらコートのポケットから小さな箱を取り出した。
「噂に聞いてはいたが、実在すると思っていなかった代物だ」
よほど高価なものが入っているのだろうか。
それは、上品なベロアの布で包まれた宝石ケースだった。
「お前とどっちが美しいかな・・・フフ・・・」
箱の中には、伝説とされている宝石が入っている。
この宝を求めたために、破産した大富豪や失脚した国王も少なくないと聞く。