第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
物心ついた時から、クレイオは“玩具”だった。
この世界には、天竜人と従者と奴隷の三種類の人間しかいないと思っていた。
マリージョアで奴隷として生まれた自分は、無知も同然。
でも、こうして悪魔によって地に落とされたことで、何も知らない人間の悲しさを知った。
「ああ・・・“空の道”が途切れてきたな」
ドフラミンゴが微笑んだ。
いつの間にか、二人はドレスローザを飛び出し、海の上にいた。
見上げれば、あれだけ空を覆っていた雲はまばらになり、太陽が辺りを明るく照らしている。
「どうだ、空を飛んでいる気分は」
「・・・怖い」
海面までは100メートルぐらいだろうか。
落ちたら即死だろうし、ドフラミンゴは能力者だからそのまま海に沈んでしまう。
「海の藻屑になるのは怖くねェのに、空から落ちるのは怖ェのか? フッフッフッ・・・おかしな女だ」
「・・・・・・・・・・・・」
「だが、恐怖は当然だ。空は“自由”だからな」
「・・・?」
ドフラミンゴの言葉の意味が分からず、視線を落とすとそこには力強く盛り上がった大胸筋。
能力を使っているせいか少し張っているし、汗ばんでいるようだった。
そこまでして、いったいどこを目指しているのだろう。
すると突然、ドフラミンゴが高度を下げ始めた。
同時に、能力を解除したのか、クレイオの身体に巻き付いていた糸も消える。
その瞬間に襲ってきたものすごい風圧に、あの糸は自分を捉えておくものではなく、風圧に押しつぶされないよう守ってくれていたということに初めて気が付いた。
「ビショップ・ロックだ・・・ちょうどいい」
見れば、まるで僧侶(ビショップ)の帽子のような丸い岩が海から突き出している。
ドフラミンゴはクレイオを抱えたまま、海底火山のイタズラでできた直径100メートルほどの岩に舞い降りた。