第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「お久しぶりです、若様。短い髪も似合っていらっしゃること」
港に着いたドフラミンゴの一行を出迎えたのは、緑色の髪を一つに結わえた若い女性。
身なりからして王宮の侍女のようだが、“若様”と呼ぶということは彼女もファミリーの一員なのか。
「元気そうだな、モネ。お前のおかげで全てがスムーズにいった」
「それは良かった。間違っても若様の船を攻撃しないよう、兵士の方にも手を回しておきましたから」
「フッフッフッ、さすがだ」
モネは、ドフラミンゴを囲んでいる幹部達の最後方で佇んでいるクレイオに目を向けた。
「言われた通り、王宮の一番奥にある部屋を改装しておきました。しばらく使われていなかったから、相当荒れていましたけど」
「ご苦労。そう簡単に城から出れねェ場所にありさえすればいい」
会話から察するに、彼女はドンキホーテファミリーに先駆けてドレスローザに潜入していたようだ。
クレイオと同年齢のように見えるが、ドフラミンゴからの信頼は相当なものだろう。
「計画を実行するのは夜だ。それまで自由にしてていいが、なるべく人は殺すんじゃねェぞ・・・これからの“働き手”になるんだからな」
計画とは、リク王を失脚させ、ドフラミンゴが“真の国王”としてドレスローザに帰還すること。
いたるところが花々で溢れ、マリージョアですらこんな美しい場所はないこの国を、壊してしまうのだろうか・・・
黙ったまま目を伏せるクレイオに、モネが声をかけてきた。
「貴方がクレイオね」
「・・・私を知っているんですか?」
「もちろん。若様から聞いているもの」
何を聞いているかとまでは語らず、意味深な微笑みを見せる。
「若様がファミリーでもない女性をこんなにもそばに置くのは珍しいことよ。ふふ、妬けちゃう」
「・・・・・・・・・・・」
「けれど、気を付けて。興味が無くなったオモチャを、あの方は簡単に捨ててしまうから。それはそれは無残な形で」
モネが自分に対して好意的でないことは明らかだった。
否。
彼女に限らず、ベビー5以外のファミリーにとって、クレイオはむしろ邪魔な存在だったに違いない。