第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
───この“鳥カゴ”に連れてこられた日を鮮明に覚えている。
「ドレス・・・ローザ?」
聞きなれない国名に首を傾げたクレイオに、ドフラミンゴは含み笑いをしながら前方に見えてきた島へ目を向けた。
ここはドンキホーテファミリーの海賊船。
甲板に二つのデッキチェアを並べ、その一つにドフラミンゴ、もう一つにクレイオが座っていた。
「かつておれの先祖が治めていた国だ」
2週間前に天竜人の乗る船を襲ったドフラミンゴを、世界政府は驚くほど簡単に王下七武海に迎え入れた。
晴れて政府公認の海賊となった彼が次に目指す場所、それがドレスローザだった。
「久しぶりだな・・・800年ぶりか? フフフフ・・・」
“新世界”に浮かぶドレスローザは、ドンキホーテ一族がマリージョアへ移住してからリク王家が統治している穏やかな国。
ヒマワリやバラの花が咲き乱れる、とても美しい島だ。
「長年かけて準備していた計画を実行するため、まずは王座を返してもらう」
「・・・・・・・・・・・・」
その頭には残酷な計画が練られているのだろう。
ドフラミンゴの笑顔を見ていると背筋が凍りそうになる。
クレイオは空になった悪魔のグラスに赤ワインをそそぐと、もう一度その横顔をチラリと見た。
いつも笑みを浮かべている口元は、ややもすれば“バカにしている”という印象を他人に与えかねない。
事実、ドフラミンゴはファミリー以外の全ての人間を見下している所がある。
同時に、その笑顔は彼の“本心”を常に隠していた。
きっと彼の計画の中でドレスローザは重要なカギなのだろう。
そして、ここに至るまでに色々なことがあったはず。
その証拠に、クレイオが自分を見ていることに気づかずに美しい島へ目を向けているドフラミンゴからは、いつの間にか笑みが消えていた。