第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)
「ああ・・・“彼女”はまだここにいるのか・・・なら、シャンクスが向かった先は一つしかない」
「ベックマンさん?」
「あいつのことは心配するな。明日の朝には戻る」
今頃はきっと、膨大な“知識”と“時”が詰まった部屋の中で、彼女と言葉を交わしているのだろう。
それは、常にシャンクスを補佐する立場の副船長ベックマンでさえも足を踏み入れてはいけない、二人だけの神聖な時間。
「麦わら帽子を被っていないあいつを見て、果たして彼女はなんというか」
彼は左腕を失った経緯を、どう語るのだろうか。
一つの物語の終わりとして語るのだろうか。
それとも・・・
一つの物語の始まりとして語るのだろうか。
「ローグタウンか・・・彼女にこそ相応しい町だ」
“東の海”には似つかわしくない、“南の海”の花。
それがこの処刑台に捧げられている意味を知る者は、数少ない。
ベックマンは新しい煙草に火をつけると、かつて海賊王の船に見習いとして乗っていたシャンクスを思い、ゆっくりと白煙を吐き出した。