第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)
入り江で碇を下ろし、意気揚々と船を降りる赤髪海賊団の船員達。
久しぶりの“地面”に喜び、つかの間の息抜きを楽しむため、ローグタウンの方々へ散っていった。
ベックマンもヤソップ達と適当な酒場へ入ろうとしていると、一人の新米乗組員が困った様子でやってくる。
「ベックマンさん、お頭どこにいったか知りませんか?」
「シャンクスか?」
医者の心得もある彼は、左腕を失ったばかりのシャンクスを気にしていた。
「グランドラインに入る前に、ちゃんとした治療を受けて欲しいとお伝えしていたのですが、ローグタウンについてからというもの姿が見えなくて」
「・・・・・・・・・・・・」
もともと自由気ままな性格の船長だ。
すでにどこかの酒場に落ち着いているのかもしれないし、どこかの公園で昼寝をしているのかもしれない。
しかし、ここはローグタウン。
ベックマンはふと、広場の中央にある処刑台に目を向けた。
富、名声、力。
この世の全てを手に入れた男の、息絶えた場所。
その土台にはいまだ、数多くの花が手向けられている。
その中に真っ赤な南国の花が供えられているのを見つけたベックマンは、強面の顔に柔らかい笑みを浮かべながら肩をすくめた。