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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)




「赤髪海賊団の船が来たぞ!!」

港で男が大声で叫ぶと、その言葉はたちまちのうちに伝達され、“観光名所”として知られる町は騒然となった。


赤髪海賊団。


グランドラインにほど近いこの町で、その名を知らぬ者はいない。
偉大なる航路への玄関口であるだけでなく、“ひとつなぎの大秘宝”を手に入れた歴史上唯一の男、ゴール・D・ロジャーの故郷と処刑地でもあるローグタウンに、海賊が訪れるのは珍しいことではない。

しかし、“赤髪”のシャンクスが率いるこの海賊団は、イーストブルーだけで勢力を張る半端な海賊達とはわけが違う。

グランドラインを自由に渡り、幾千もの猛者達と鎬を削っている。
特に船長は、大剣豪ジュラキュール・ミホークと決闘を行うほどの剣の使い手だ。

その彼の背中を守るのは、ベン・ベックマン、ラッキー・ルウ、ヤソップなど名うての海賊達。

その気になれば、この小さな町など一晩で滅ぼすことができるだろう。


「酒を!! 飯を大量に用意しておけ!!」


しかし、誰もが恐れる海賊の船が来航したというのに、人々はどこか興奮気味だった。
町中の酒場という酒場が店から客を追い出し、間もなくやってくるだろう彼らを出迎える準備をする。

それは、町の誰もが知っているからだった。

彼らは決して、むやみに人を傷つけるような悪人ではない。
むしろ、海の向こうの話をしてくれる、愉快で陽気な男達だ。

突然の“赤髪”の来航に慌てふためいているのは、じゅうぶんな戦力が揃っていない海軍と、衝突は避けたいと思っている海賊達だけだった。



喧噪の中、一人の女性がゴールド・ロジャーの処刑台の前で足を止め、潮風が吹いてくる港の方を見つめる。


「“赤髪”のシャンクス・・・」


町一番の広場に設置された、木造の台。
12年前、最も偉大な海賊がこの場所で、全世界の注目を一身に受けながら、斬首となった。


「また、一つの物語が始まるのかしらね・・・ロジャー」


年の頃は20か。
深い海の色をした瞳で、物言わぬ処刑台を懐かしそうに見上げる彼女の名は───


クレイオといった。



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