第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「さ・・・力を抜いて」
裸の男に組み敷かれることなど日常茶飯事だったにも関わらず、自分が主導権を握れないということだけで緊張してしまう。
サンジは、強張る頬を解すように、優しくクレイオの顔を撫でた。
「胸、触っていいかい?」
「いちいち聞かなくて大丈夫よ。嫌だったら最初から誘っていない」
自分の出生を隠すためにまとっていたキモノを脱いだ途端、まるで見えない足枷が外れたようだった。
この人に抱かれるんだ、と思ったら嬉しさすら込み上げてくる。
ぎこちなく乳房を揉む手がおかしくて、クレイオはサンジの金髪を指で梳いた。
「もっと性急かと思ったけれど、こんな時でも貴方は優しいのね」
「いや・・・脳内シミュレーションではもっとうまくやれていたんだが」
「ふふ、童貞の人によくある話ね」
クレイオは身体を起こすと、サンジにキスをした。
そして相手が怯んだ隙に態勢を入れ替え、今度はベッドに仰向けになるサンジを見下ろす。
「コックとしての貴方も、海賊としての貴方も見せてもらったのに、私は娼婦としての自分をまだ見てもらっていない」
「え・・・クレイオちゃん?」
「私はこの島たった一人の娼婦。前戯は任せて」
綺麗に微笑むクレイオを前に、誰が抗えるだろう。
啄むようにキスを落としながら、耳の裏、鎖骨のくぼみ、脇の下、乳首などあらゆる性感帯を指で刺激していく。
「はうっ・・・!」
手首の裏から肘にかけて前腕を舌でツーっと舐めると、サンジが驚いたような嬌声を上げた。
「何いまの?! 背筋がゾクゾクってした!」
「気持ちいいでしょ? 人間の性感帯は思わぬところにあるものよ」
「・・・・・・・・・・・・」
それを探し出し、的確に刺激を与える。
髪を片側に流し、上目遣いで見上げるクレイオに、サンジは堪らないほど興奮を覚えた。