第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「サンジ」
クレイオはサンジの両手にそれぞれ自分の手を重ね、ネクタイを締めている胸に額を寄せた。
「貴方と結ばれる運命にはないけれど・・・貴方が残した“命”なら、私は無条件に愛していける」
“外の世界にはきっと、貴方を本当に愛してくれる人がいるから”
貴方の言葉には、貴方の眼差しには、女性に対する愛情が溢れている。
先生もきっとそう思ってくれるでしょう?
「貴方の子どものためなら、私は無条件に犠牲になることができる」
決して綺麗な身体とはいえないけれど・・・
「貴方にこの身体を捧げたい」
暗い部屋で寄り添う、娼婦と海賊。
その姿はあまりにも切なく、そしてあまりにも儚く・・・まるで二人の運命を象徴しているかのようだ。
「貴方は言っていたわよね。“おれが抱くことで幸せにできるならどんな女でも抱く”、と」
サンジを見上げるクレイオの瞳は、娼婦のそれではなく、幸せを望む一人の女の瞳。
「貴方に抱かれたら私は幸せ・・・そう言ったら抱いてくれる?」
その瞳から一筋の涙が零れる。
「私を幸せにして、サンジ」
サンジは一言も発することなくクレイオを見つめていた。
まるで、その心に触れようとしているかのように。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
どれくらいそうしていただろう。
ふと、サンジは数歩離れると、クレイオに背を向けた。
「サンジ・・・?」
「・・・このままじゃダメだ」
窓の方へ歩いていき、閉め切っていたカーテンを全部開ける。
途端に差し込んできた陽の光に、クレイオは目を細めた。
一瞬、視界が真っ白になったところで、娼婦の手を優しく握る海賊。
「“本物の太陽”を見たい・・・そうだったよな?」
サンジはニコリと微笑んだ。
「おれは太陽に背きながら、女を愛することはしねェ」
堂々とその下で愛して見せる。
「おれの全てで君を幸せにするよ、クレイオちゃん」
そう言ってクレイオを抱き寄せ、その唇にキスをした。