第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「私がずっと処女を守ってきたのには、望まれぬ子が生まれてしまうような、“悲劇の連鎖”を作り出さないようにするため」
「・・・・・・・・・・・・」
「たとえその人と結ばれることはなくても、“この人の子どもを産みたい”と思った人とだけセックスをしたいと思っていた」
人の一生は短い。
死ぬまでにそのような人と出会えなくても仕方がないと思っていた。
家族ができなくても、一人には慣れているから平気だと思っていた。
だけど・・・
「人生って本当に不思議・・・」
クレイオが身にまとう月下香の香りがサンジの鼻をくすぐる。
誘惑するためではなく、甘く切ない気持ちを届けるために。
「まさか・・・本当にそういう人に出会えるなんてね・・・」
ある日突然目の前に現れたフェミニスト。
軟派な性格をしているのに誘惑には決して堕ちることなく、娼婦をまるで貴婦人のように扱う。
そして、幸せをただ願ってくれた。
「さっき、サンジが“男”として謝ってくれた時・・・」
心のどこかに残っていた国王や母親、先生の弟への恨みが全て晴れていくような気がした。
そして、娼婦を蔑む島の人、性欲処理の道具としか扱わない客達・・・
クレイオだって人間だ。
怒りや悲しみを覚えることだってある。
でも、それすらも晴れていくような気がした。
「あの時、本当に心が軽くなって・・・涙が止まらなかった」
闇の中で生きることを押し付けられ、それを当然だと思い込んでいたけれど・・・
「私もみんなと同じように生きていいんだって・・・教えてもらったような気がした」
“信じていれば、いつか必ず外に出られる日がくるから・・・”
先生・・・
もしかしたら、私はあの瞬間、本当に“外”に出られたのかもしれない。
自分のために嗚咽を上げることができた、あの瞬間───