第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「オールブルー」
“おれはオールブルーを見つけるために”
麦わら海賊団に入り、イーストブルーからグランドラインに入る時、仲間の前でそう誓った。
「東の海、西の海、北の海、南の海・・・この四つの海にいる全種類の魚達が住んでいる海域のことだ」
本当にそのような楽園があるのかは分からない。
でも・・・
「それを見つけるのが、おれの夢さ」
その笑顔はまるで子どものように輝いていて。
海賊として非情なまでに海兵を倒していた男と同一人物とは思えない。
「へえ・・・素敵ね」
「だろォ?」
へへへと笑うサンジに、クレイオも思わず吹き出した。
こんな風に誰かと夢を語るなんて初めてのことだ。
「本当にサンジと話していると調子が狂ってしまう。私、誰にも自分の過去を話すつもりなんてなかったのに」
「そりゃ褒め言葉として受け取っておくぜ! で、クレイオちゃんの夢は?」
「夢・・・」
夢ならある。
私の生い立ちを知った後でこんな話を聞いても笑うだけだろうけど・・・
「家族を・・・作ること」
一緒に笑い、一緒に泣き、時にはケンカをして、でもその日の夜には手を取り合って一緒に眠る。
その人を無条件に愛し、その人のためなら無条件に犠牲となれる、かけがえのない存在に出会いたい。
「もちろん、両親や兄弟はもう無理ということは分かっている。だから、私が望むのは・・・」
この身体に生命を宿すこと───