第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「ゾロ、サンジ達に道を作ってやれ」
「船長命令なら仕方ねェ」
“サンジのため”というのが気に入らないが、ゾロとしても早く斬りたくてウズウズしていたところだ。
「一刀流・・・」
両手で一本の刀を持ち、海兵の束に向かって大きく構えを取る。
「“三十六煩悩鳳(さんじゅうろくポンドほう)”!!」
それはまさに大砲のごとく。
扇状に飛んだ斬撃は、サンジとクレイオが逃げる道を作るように海兵達を吹き飛ばした。
「クレイオちゃん、立てるか?」
「え・・・? あ・・・」
目の前で起こっている、海軍と海賊のぶつかり合い。
その迫力に、クレイオは腰を抜かしてしまっていた。
そうと知ると、サンジはクレイオの背中と膝の後ろに手を差し込み、身体を抱き上げる。
「ちょっとの間、我慢してくれな」
「サ、サンジ・・・!」
「ん?」
せっかく仲間達が来てくれたんだ。
逃げるなら今のうちだろう。
「私のことなら大丈夫・・・! サンジは今のうちにみなさんと一緒にこの島を離れて!」
するとサンジは目尻を下げながら、しまりのない顔でクレイオを見つめた。
「なァに言ってんの、クレイオちゃん! これは愛の逃避行さ!」
「サンジ・・・冗談は言ってないで!」
「それに・・・」
クレイオを抱く腕に力が込められる。
「君の過去を聞いて、このまま放っていけるわけねェだろ」
その真剣な瞳にドキリとする。
「うちの船長も、仲間も、みんな同じことを言うはずさ」
2時間。
それが、サンジとクレイオに残された時間だった。