第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「・・・え・・・?」
もうもうと立ちこめていた煙が晴れていくにつれ、はっきりとしていく人影。
それは、地面に倒れている大勢の海兵だった。
サンジは地面に手をつき、逆立ちの姿勢のまま涼しい顔をしている。
「チッ・・・たった20人か」
一瞬で倒したその数が不満だというのか。
スッと身体を起こすと、立ち尽くしている海兵達に向かって、“かかって来い”とばかりに顎を上げて挑発する。
すると、「正義」の文字が入ったコートを着た海兵が叫んだ。
「余裕でいられるのも今のうちだぞ。お前の仲間達は今頃、海軍によって全員捕らえられているはずだ!」
港に停泊していたサニー号は、軍艦に包囲されている。
別行動を取っていたサンジだけは難を逃れたが、それもここまでだ。
「ほぅ・・・」
ルフィ達が捕まった・・・?
サンジはズボンのポケットに片手を入れ、首を傾げる。
「そりゃいったい・・・なんの冗談だ?」
───虚勢?
いや、違う。
サンジがふと空の向こうを見上げた、その時だった。
数百メートル向こうから、大きな叫び声が響く。
「・・・ゴムゴムのォォォ!!!!!」
それは、まばたきをするスピードよりも速く。
「“JET銃乱打(ジェットガトリング)”!!!」
赤い蒸気を帯びた幾千もの“銃弾”が、一瞬にして海兵達を吹き飛ばしていった。