• テキストサイズ

【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~





二人がいる噴水を中心に、半径50メートル。

店の前。
建物の屋根。
木の陰。

目に映る全ての場所に海兵がいた。
それぞれ銃や剣を持ち、その矛先をサンジとクレイオに向けている。

昼下がりの憩いの場からは、いつしか住民達の姿は消えていた。

「観念しろ、黒足!」
「おいおい・・・そんな物騒なモンをクレイオちゃんに向けるんじゃねェ」

サンジは新しい煙草を咥えると、盾になるようにクレイオと海軍の間に立った。

「忘れていた・・・そういえば、貴方達を捕らえるために相当な数の海軍がこの島に向かっているって・・・!」

だから漁船の出航は禁じられていると聞いていたのに・・・
なぜこんな大事なことを忘れていたのだろう。
自分の身の上話なんかしている場合じゃなかった。

今まで見たこともない数の海兵を前に、クレイオは絶望を覚えた。

───どうやったって逃げられるわけがない。

「ごめんなさい、サンジ・・・私のせいだ・・・」
「何言ってるんだ、クレイオちゃん」

ゆっくりと煙草をふかしながら振り返るサンジ。
そして、ニコリと微笑む。


「おれ達は“司法の島”エニエス・ロビーを落としてきたばかりの海賊だぜ?」


たった一人の仲間を連れ戻すために。
司法の塔にたなびく旗を撃ち抜き、世界政府を敵に回した。


「こんなのは日常茶飯事だ」


サンジは“女好きなコック”の顔から、“海賊”の顔へと変わっていた。


「サ・・・ンジ・・・」


普通の人間ならば降伏を選びそうな状況にも関わらず、何でもないことのように言ってのけた男に、背筋がゾクリとする。

これが、一味全員が賞金首という“麦わら海賊団”なのか。






/ 1059ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp