第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「クレイオちゃん」
温かいサンジの腕がクレイオを抱きしめる。
もっと泣いていいんだと、その胸が語っているようだ。
「サンジ・・・どうして貴方はそんなに優しいの・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
「貴方っていったい・・・なんなの・・・?」
すると、サンジはクレイオの背中を優しく撫でながら微笑んだ。
「おれは、男だよ」
騙されても、
理不尽な要求をされても、
殺されても、
目の前にいる女性を愛そうとする、究極のフェミニスト。
それが、サンジという男。
「そして、海賊だ」
海賊が掲げるドクロのマークは“信念”の象徴。
だから、サンジは何があろうとそれを貫く。
サンジにとっての信念は・・・
「おれは君の味方であり、君を傷つける全てのものの敵だよ」
女性である君のためなら、命を懸けてもかまわない───
「サンジ・・・」
クレイオが顔をあげると、そこには真剣なサンジの瞳。
男性の腕がこれほどまでに温かいなんて、今まで知らなかった。
全てを委ねてしまいたい・・・そう思った、その時。
「“黒足のサンジ”!! 貴様は完全に包囲されている!!」
突然、怒号が広場に響いた。
「なんだ・・・せっかくのいいムードがぶち壊しじゃねェか・・・」
同時に、サンジの瞳の色が変わる。
気付けば、クレイオとサンジがいる噴水の周りを、数百人もの海兵が取り囲んでいた。