• テキストサイズ

【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~




「もちろん、島の人々はとても喜び、誕生を指折り数えていたそうよ。けど、いつまで待っても、“その日”は来なかった」

そこまでくると、クレイオの手が震え始める。

寒いからではない。
怖いからではない。

この先の話を、誰にも明かしたことがないからだ。
それを語ることは許されなかったし、あまりにもつらい過去だった。


「赤ちゃんは・・・誕生していた・・・でも、王家はそれを明かすことはできなかった。なぜか分かる?」

「・・・・・・・・・・・・」

「この島の王と王妃は、二人とも綺麗な金髪。だけど、その赤ちゃんの髪は違う色をしていた・・・!!」


何も知らずにこの世界に生まれ落ちた“女の子”は、王の血を継いではいなかった。
残酷な証となったその髪の色は、今サンジの隣で肩を震わせている娼婦の髪と同じ色。


「島の人には“死産”と発表された・・・そして、その赤ちゃんは誰の目にも触れられない、城の地下室で育てられることになった」


冷たい地下室の牢。
天井と壁の境目にはめられた、小さな明り取り窓から光が差し込む。

それが、クレイオの持つ一番古い記憶。


「クレイオちゃん・・・その赤ん坊って、まさか・・・」


サンジの心臓がドクンと大きく鼓動した。
どうか、自分が考えていることが間違っていて欲しいと、願わずにはいられなくなる。

しかし、クレイオは微笑みながら頷いた。


「王から最初に言われた言葉は、“お前は存在してはいけない”」


でも、もっとつらかったのは・・・


「母から最後に言われた言葉は、“どうして生まれてきてしまったの”」


闇の中で犯され、闇の中で産み落とし、闇の中に閉じ込める。

それが実の母が、娘に下した決断だった。






/ 1059ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp