第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
それは今から20年前のこと。
近い将来に王位を継ぐ王子が、隣の国の王女と結婚するということで、この小さな島は大きな喜びに包まれていた。
島中で日々、祝いの音楽が響き、たくさんのご馳走が作られた。
また、ウォーターセブンだけでなく、「春の女王の町」セント・ポプラ、「美食の町」プッチなど、近隣諸国から来賓が集まり、将来の王妃が純白のウェディングドレスに袖を通す日を心待ちにしていた。
「だけど、婚礼の前夜に悲劇は起こった・・・」
この島の伝統として、結婚を控えた女性を祝う宴が友人達によって催された。
それは男子禁制で、独身女性が最後にハメを外すことが許される夜。
「まだ王家に嫁いでいなかった王妃様は、護衛を連れずに出席した。宴が終わったのは深夜2時すぎ・・・王妃様はお一人でお帰りになられた」
そして、その悲劇は起こる。
「酔い覚ましのために歩いていたら複数の男が突然現れて、お城からすぐ近くの納屋に連れ込まれてしまった・・・」
とても美しいと評判の花嫁。
誰もが彼女に憧れていた。
「王妃様は・・・婚礼の前夜に複数の男からレイプされたの・・・」
「・・・ひでェ話だ・・・」
顔も知らない王妃だが、そのむごい仕打ちを思うと怒りが込み上げ、煙草を噛んでいるサンジの歯に力が入る。
「でも、そのことを公にしたら王妃様だけでなく、王家の威信に関わる・・・だから、何事も無かったかのように、予定通り婚礼は行われた」
祝福の花びらが舞う中で、花嫁はニコリともしなかったそう。
だが、その理由を知る人間は、誰一人としていなかった。
王とごく一部の家臣、そして“当事者”達だけを除いて───
「でも、本当の悲劇はここからだった・・・」
程なくして、王妃は懐妊した。