第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「この噴水は、この島の王がウォーターセブンに発注したもの。ほら、船の先端に王家の紋章があるでしょう?」
「・・・ああ、確かに」
サンジはどうしてクレイオがこの噴水の由来を語り始めたのか分からなかった。
だが、言葉を挟むことはせず、クレイオが話しやすいように心地よい沈黙を作る。
「この島には、とても綺麗で春の陽気のような王妃様がいた」
「へぇ・・・そりゃぜひ、お目にかかりてェもんだ」
「・・・サンジのような金髪で、とても綺麗な方だったそうよ。でも、もう亡くなられてしまったの」
明るい太陽が降り注ぐ“常春”の女王。
彼女から笑顔と命を奪ってしまったのは、深い、深い闇だ。
「サンジ・・・少しだけ、私の話をしてもいい?」
闇に生まれ落ちた自分が、どのようにして娼婦となったのか。
貴方になら打ち明けられる。
サンジは煙草を取り出して火をつけると、ゆっくりと一口吸ってから空を見上げた。
「ああ、聞かせてくれ」
君の心の中にどんな暗い影があったとしても。
ここは太陽の光が差す、憩いの場。
君の過去も、君の現在も、きっと優しく照らしてくれるはずだ。