• テキストサイズ

【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~



「君はちゃんと“娼婦”だと名乗ってくれたのに、おれは“海賊”だと名乗らなかった」

本当にごめん、と優しい顔で謝るサンジ。
クレイオにとってはそんなこと、どうでも良かった。

海賊だろうとなんだろうと、顔を殴り、酷いことを言ったのは自分だ。
助けてくれた安堵と、申し訳なさとが同時に込み上げ、涙が止まらなくなる。

「クレイオちゃんっ! ごめん、怖かったよな! もっと早く助けに来るべきだった!」
「違う・・・! 謝らなければいけないのは私の方だよ」
「え・・・?」
「もう二度と私に関わらないで、なんて言ってごめんなさい・・・!」

するとサンジは、漁師の上でピタリと止めていた足を下ろし、クレイオの所に歩み寄る。
そして、スーツのジャケットを脱ぐと、裸の身体にかけてくれた。


「女の言葉は、それがウソだろうが真実だろうが、全て許すのが男だ」


だから気にしないで、と微笑む。


「クレイオちゃん、この男をどうして欲しい?」
「え・・・?」
「頭を砕いて欲しいかい? それとも二度と女が抱けない体にしようか?」

魚をさばく程度のことのように言っているが、それが冗談でないことは、先ほどの剣幕を見れば分かる。
クレイオはサンジの腕を掴むと、首を横に振った。


「サンジ、お願い・・・この人には何もしなくていい」


どんな形であっても、目の前で“暴力”は起こって欲しくない。
元はといえば、この漁師の性欲を鎮めてやることができなかった、自分が悪いのだから・・・


「その代わり、私を外に連れて行って欲しい・・・」


どうか、無様に床で倒れている漁師をこれ以上傷つけないで。


「本物の・・・太陽が見たい・・・」


強姦されかけたにも関わらず、クレイオは男を許そうとしていた。
その健気な思いが、サンジの怒りを鎮める。


「ああ、分かった」


海賊は優しく頷くと、まるで壊れ物を扱うように娼婦を抱き上げた。




/ 1059ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp