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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~




「ヒィ・・・!!」

頭を蹴り砕かれると思ったのだろう。
客は必至に両腕で顔を隠しながら、情けない声を上げる。

「た、助けてくれ!!」

「助けてくれ? クレイオちゃんが同じ言葉を言った時、お前はどうしようとした?」

「クレイオにはもう手を出さねェ! 誓ってもいい! だから、どうか命だけは助けてくれ・・・!!」

だが、サンジは客の頭上から足をどかそうとはしなかった。
煙草を咥えたまま、冷酷な瞳で見下ろしている。

「命だけは助けろ?」

これが本当に、クレイオに甘いデザートを作ってくれた彼なのだろうか。
あの時は腰をクネクネとさせ、どこからどう見ても優男だった。

「残念だが、そりゃ頼む相手を間違ってる」


圧倒的な強さ。
絶望的な冷酷さ。


「“海賊”が命乞いを聞くと思うか?」


その言葉は、なすすべもなく震えていた漁師を恐怖のどん底に突き落とした。


「海・・・賊・・・? サンジ・・・貴方・・・」


状況を飲み込めずにいるクレイオを振り返ると、サンジはすまなそうに微笑む。


「ごめんよ・・・本当は一番に名乗るべきだったね」

「・・・・・・・・・・・・」

「おれはコックであり───」


金色の髪。
グルグルに巻いた眉毛。
煙草。

ちらりと見た手配書の中に、“面影”がある人物はいた。


「“黒足のサンジ”、麦わらの一味の海賊だ」


“見かけない顔ね・・・旅の人?”

“まあ・・・そんなところだ。今朝、この島に着いた”


どうして気が付かなかったのだろう。
少し考えれば分かったはずだ。

ということは、海兵に捕まる危険があったのに、自分をレストランに誘ってくれたのか・・・





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