第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)
「時が流れりゃ、人も、人との関係も変わるのかもしれねェな」
「・・・・・・・・・・・・・・」
シャンクスはクレイオを胸に乗せるように抱き寄せると、まだ乾いていない髪にキスをした。
「この世でたった一人、お前を除いて───」
窓から差し込む夕日が、シャンクスの髪を一層赤く染める。
それはまるで炎のよう。
「ごめんな、クレイオ」
突然の謝罪の言葉に、クレイオは首を傾げた。
「いきなりどうしたの・・・?」
「いつかお前に約束した“悪魔の実”を、まだ見つけられずにいる」
この世でたった一人、どんなに時が立っても“変わることのない”女性。
そのために彼女は深い孤独の中にいる。
そこから救い出す術は、たった一つ。
「“オペオペの実”」
ロジャーが処刑された日。
シャンクスは、処刑台の下に溜まった血の中で蹲るクレイオにこう約束した。
“何年かかっても必ず見つけ出す。それまで待っていてくれ”
「“オペオペの実”が出回っていることは確認した。だが、タッチの差で別の海賊団の手に渡ってしまったようだ」
必ず見つけると約束した、“悪魔の実”。
航海の途中で図らずも“ゴムゴムの実”を手に入れたが、目当ての“オペオペの実”はすでに呪うべき“能力者”を見つけたとばかりに、再び闇の中へ消えていった。
この時、シャンクスはまだ知らない。
今から遡ること数カ月前、“D”の名を持つ一人の少年が“オペオペの実”を口にしたことを。
それは、少年の運命を大きく変えただけでなく、のちに世界を震撼させる事件の発端となることを。