第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
しかし、性欲が暴走した男は止まる気配がない。
「魚でも、女でも、“初物”は独特な旨味がある」
太い指がクレイオの膣口を捉えた瞬間、激痛で腰が仰け反った。
なんとか逃げようとベッドのフレームを掴んだが、強い力で押さえつけられて身体を起こすことすらできない。
「お願い、何でもするからそれだけはやめて!」
「娼婦のくせに処女だと色々と面倒だろ? おれが捨てさせてやる」
もともとクレイオに執着していた男だ。
“処女”だと知り、それを奪いたいという欲求が爆発しようとしていた。
「金のために男のイチモツを美味そうに咥える女が、いまさら純情ぶるんじゃねェよ」
「違う! 私は・・・私は・・・」
ただ、性欲という暴力から守ってあげたかった。
二度と私のような人間が生まれないように・・・
「お願い、挿れないで・・・!! 誰か来て!!」
「うるせェな・・・猿ぐつわされてェか?」
喉を押さえつけられ気道を潰される。
声を出すどころか、呼吸すらできず、だんだんと意識が薄れていった。
助けて・・・
誰か・・・誰か・・・!
もはやクレイオの声は誰にも届かない。
声が届く望みがあるとしたら、それは“見聞色”の覇気使いぐらいのものだ。
「サン・・・ジ・・・」
細身で身のこなしが優雅なコックの姿がよぎる。
もう二度と顔を見せないでと突き放したのは自分だ。
助けにきてくれるはずもない。
いや・・・来てくれたとしても、この乱暴な漁師には敵わないだろう。
本当に優しい人だから・・・傷つけたくない。
残酷なことね・・・
私を犯す男が貴方だったら、まだ耐えられたのに・・・
「サンジ・・・」
クレイオの両目から涙が溢れ出た、その瞬間だった。