第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「で、お前が怒らせた女って、そのショーフなのか?」
「ああ・・・そうだ」
男の欲望の捌け口になってもいつも笑顔を絶やさない、健気な彼女を幸せにしてやりたいと思った。
そのためには、娼婦という仕事の呪縛から解放してやらなければ。
「とても優しい子なんだ・・・だから、娼婦をやめさせてやりたいと思った」
「なんで?」
「性欲を慰める仕事なんて、心の底から望んでやる人間なんているわけねェだろ」
「・・・・・・・・・・・・」
ルフィは何も言わず、ゴキュゴキュとオレンジジュースを飲み干した。
今までの話をどこまで理解しているかは分からないが、軽くゲップをしながら純粋な疑問をサンジにぶつける。
「で・・・ショーフがお前にその仕事が嫌だって言ったのか?」
その言葉に、サンジの瞳が大きく広がった
もしかしたらそれは、簡単なことのようでいて、気づくのが極めて難しいことなのかもしれない。
「なんでお前は、そいつが自分の仕事を心の底から望んでいねェって分かるんだ?」
「・・・そ・・・そりゃ、お前・・・」
娼婦の仕事は望んでするようなものではない。
そう勝手に決めつけているのは、サンジだ。
「なあ、サンジ。おれ達、海賊も同じじゃねェのか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「おれはじいちゃんにずっと、海賊にだけはなるなって言われてたけど、自分でなるって決めたから海賊になった」
お前は違うのか? と真っ直ぐな目を向ける。
ルフィの祖父は海軍のモンキー・D・ガープ中将。
ウォーターセブンを出発する時に、サンジ達も顔を合わせていた。
「だからおれは、自分が海賊だって胸張って言えるぞ」
世間からは犯罪者と呼ばれようと。
命を懸ける覚悟があるからこそ、船に海賊旗を掲げる。
手配書がそこら中に配布されても、堂々と顔を上げて歩く。
何故なら、これが自分で選んだ道だからだ。