第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「実はさっき、レディーを怒らせちまってな」
「怒らせた?」
ナミにいつも怒られているルフィは、“それがどうした?”と言いたげに首を傾げている。
するとサンジは忌々しげに自分の股間を指さした。
「ホレ、見てのとおり。ここ最近どうにも興奮が治まんねェから、昨日はホテルに泊まってた。みんなに迷惑はかけられないからな」
見れば、黒いズボンのチャック部分が大きく盛り上がっている。
精通した男なら誰もが知っている現象に、ルフィも“あ~”と頷いた。
「教えたじぇねェか。そういう時はな、思いっきりちんこ伸ばすんだ! すぐにビュッて出て、むず痒いのが治るぞ」
「全身ゴムのお前と一緒にするな! んなことしたら死ぬわ!」
「そうなのか?」
やはりこいつと話していると調子が狂う。
いや・・・狂っていた調子がさらに狂わされて、“元”に戻ったかもしれない。
「泊まっているホテルで、こいつを治してくれるという心優しい美女に出会ったんだが・・・どうしても頼めなくて今もこのザマだ」
「なんでだ? 治してくれるなんて、いい奴じゃねェか」
「彼女は娼婦だからそう言ってくれたんだよ。醜態晒しているおれを放っておけなかったんだろ」
「ショーフ?」
サンジから口直しのためのオレンジジュースを受け取りながら、ルフィは“どこかで聞いたことがある名前だな”と思った。