第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
“ログが溜まったらすぐに出航するから、連絡だけはいつでもつくようにしておいてよ”
サンジにとって、ナミの言いつけは絶対だ。
確か1日で溜まるといっていたから、今日中には船に戻らないといけない。
「ふぅ・・・」
朝、シャワーを浴びながら、サンジは溜息をついた。
PSASの症状が出てから2日。
サンジの男根はいまだ、血管を浮き上がらせながら反り返ったまま。
昨日クレイオと別れてからも何度か抜いた。
そこは真っ赤に腫れ、少し触るだけで痛みを覚えるようになっていた。
「・・・ちくしょう、いつになったら治まるんだ」
“自分で抑制することができないから、身体的にも精神的にも発症患者を追いつめてしまう・・・誰にも言えないまま自殺してしまう例も少なくないって・・・”
チョッパーはそう言っていた。
まあ、心配しなくてもサンジは自殺を選ぶようなタマではない。
だが、ナミとロビンのことを思うがあまり、精神的に追い詰められるのは目に見えていた。
“サンジを初めて見た時、私なら貴方を救うことができると思った”
「クレイオちゃん・・・」
彼女はどうして男の欲望を恐れないのだろう。
きっと嫌な思いも、怖い思いもたくさんしているはずだ。
それなのに彼女は微笑み、見ず知らずのサンジに救いの手を差し伸べようとしていた。
“食欲を満たす貴方の才能は喜ばれるのに、性欲を満たす私の才能が認められないのは何故かしら”
そう言った時の彼女は、微かに寂しそうな瞳をしていた。
自分がコックの道を選んだのは、調理が好きだったからだ。
では、クレイオが娼婦の道を選んだのは・・・?
シャワーの蛇口をひねり、タオルで体を拭きながら出ると、窓から太陽の光がようやく差し込もうとしていた。
時計の針は6時を指している。
いつもなら仲間のために朝食を作るところだが、今日はその必要がない。
シャツとズボンを履き、髪が渇くまで一服しようと思ったその時だった。