第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
クレイオは微笑みながら、サンジを真っ直ぐと見つめた。
「今も苦しいんじゃない?」
「・・・ああ・・・」
娼婦と言いながらも、その瞳はとても純粋で。
吸い込まれそうになるのを必死に堪えた。
「君のいう通り、おれはPSASとやらなのかもしれない。年に数回、どうしようもなく興奮して、勃起し続ける」
「しかも、何度射精しても足りない、そうでしょ?」
サンジが頷くと、クレイオはデミグラスソースがたっぷりとかかった肉の切れ端を口に運んだ。
その唇がとても色っぽく、目が離せなくなる。
「安心して。その病気を持っている人は他にもいる。ただ、隠れているだけで・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「そういう人はみんな、私のところへ来るわ。快楽を与えてあげるの。彼らが気を失うまでね」
そして目覚めた時、彼らの勃起は治まっている。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
サンジはしばらく黙っていた。
そしてグラスのシャンパンをもう一口飲むと、そのままイスから立ち上がる。
「デザートを・・・作ってくる」
「ごめんなさい、気に障った?」
「いいや・・・」
君の言うことは何一つ、間違っていない。
だけど、おれの心がそれを認めたくねェんだ。
「最高のデザートを作るよ。君が今まで野郎に与えた分以上の幸福を感じるような」
「サンジ・・・」
「コックが願うのは、自分の料理を食ってくれる人が幸せになることだからさ」
レストランだけでない。
性病の予防薬を買うために行く薬屋や、毎日のパンを買うために行くパン屋すら、クレイオが来店すると嫌な顔をする。
そんな娼婦の幸せを願い、一流コックは優しく微笑んだ。