第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
通されたテーブルは、クリスタルのシャンデリアが頭上で繊細な光を放つ、このレストランでもっとも上等な席。
一番目立たない席に通したいと思ったウェイターだったが、皮肉なことにここしか空いていなかった。
食前酒には、甘すぎないシャンパン。
前菜には、この島の近海で採れたカニのタルトに、ホワイトアスパラのムースを添えて。
「どうぞ、マドモアゼル」
余った食材や、捨てる部位から作ったとは思えないほど丁寧で綺麗な料理に、クレイオは驚きながらサンジを見上げた。
「綺麗・・・これ、本当に貴方が作ったの? この短時間で?」
「ああ、そうさ! 見た目だけじゃなくて、味も最高だぜ」
「旅の人だとは知っていたけれど、まさかコックだとは思わなかったわ」
「はは、そうかい?」
金髪にグルグル眉毛、ヘビースモーカーに女ったらしという風変りな男が作ったとは思えないほど、その味は繊細で美味しい。
グラスや皿を運ぶその仕草もとても優雅で、もしかしたら相当名の通った一流レストランで給仕をしていたのかもしれない。
さらに、イカと貝のソテー、オマールエビのテルミドールと料理は続き、メインディッシュが真っ白なテーブルクロスの上に置かれた。
「特性デミグラスソースで頂く、仔牛の炭火焼きだよ」
「・・・すごい」
まるで天竜人のディナーのように豪華で美しい料理に、もはや溜息しか出ない。
店内にいた他の客もサンジが運ぶ料理に目を奪われ、ウェイター達に同じものを注文する者もいた。
「貴方は食べないの?」
「ん? ああ、おれは味見しながら食べているからな。それに・・・」
「それに?」
「君が美味しそうに食べてくれる姿を見るだけで、腹一杯なのさァ~!」
ノホホホホと鼻の下を伸ばすサンジに、思わず苦笑いをしてしまう。
この人、こういう所が無ければモテそうなのに・・・と思わずにはいられなかった。