第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
仲間の夕飯を作り終え、サンジがホテルへと続く路地に戻ってきた時はすでに6時を回っていた。
太陽はすっかりと姿を消し、大通りを歩く人々は皆、家路を急いでいる。
「さて、どうするかな」
サンジの手には、途中で出会った花売りの少女の可愛らしさに負けて買った、ピンク色のバラの花束。
もし明日の朝まで綺麗に咲いていたら、ナミとロビンにプレゼントしようと思った、その時だった。
「・・・ん?」
大通りからは死角となっている場所に、二つの影。
一人は壁を背にして立ち、一人は地面に膝をついている。
よく目を凝らしてみると、膝をついている方は見覚えのある女だった。
「クレイオちゃん?」
立っているのは30代後半ぐらいの痩身の男。
クレイオは彼の股間に顔を付け、剥き出しとなった性器を口に含んでいた。
そしてちょうど男が絶頂を迎えたのだろう。
小さく呻き声を上げると、全身を数回震わせてから恍惚な表情を浮かべた。
「んッ・・・」
クレイオがちょっと苦しそうな声を上げたのは、口の中に精液を吐き出されたからか。
しばらくハンカチで口を抑えていたが、顔を上げ男に向かって微笑む。
「気持ち良かった?」
「ああ、いつもありがとな」
男は後ろポケットから数枚の紙幣を取り出すと、慣れた手つきでクレイオの胸の谷間に挟んだ。
その光景を目の当たりにしたサンジは、心の底で渦巻いていたドロドロとした感情が込み上げてくるのを感じた。
「クレイオちゃん」
まさかこんな狭く、暗い路地に他に人がいるとは思っていなかったのだろう。
娼婦との行為を見られた男は驚いたようにサンジを見ると、ズボンのチャックを上げながらそそくさとその場から去って行ってしまった。