第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
彼女が与えるのは、絶望的な快楽。
仰向けの客に覆いかぶさるようにゆっくりと身体を重ねると、耳たぶから首筋に舌を這わせる。
「ん・・・あ」
まるで女のような嬌声を上げる客がおかしかったのか、クスクスと笑いながら今度は胸の突起を甘噛みした。
フワリと香る、甘い月下香。
肉欲の発散に耽る男の上で、娼婦の瞳が微かに揺れる。
“おれは、自分の欲望のために女は抱かねェ”
───金色の髪をした、旅の男。
この島に今朝来たという彼は、男の欲望から生まれたクレイオの誘惑に堕ちることはなかった。
“君はおれに抱かれても幸せになれなさそうだ。だから、抱くことはできねェ”
女を知らないから、セックスという行為に夢を見過ぎているのだろうか。
いや・・・違う。
彼はお伽話を語っているような瞳をしていなかった。
彼が口にしていたのは、命を懸けた信念。
そう思わせるほど、覚悟を秘めた瞳をしていた。
「そんな男がいるなんて・・・私は認めない」
クレイオは身体を起こして客の下腹部の上にまたがると、後ろ手で男根を握る。
それを尻の割れ目に沿うように密着させ、そのまま腰を動かした。
「ハァ・・・アッアッアッ」
まるで優しい牙で甘噛みされるような快感に、客は大きな声を上げた。
挿入しているわけではないのに、粘膜と薄皮を同時に溶かされるような気持ち良さが神経を貫く。
上下だけでなく捻りも加えたグラインドは、快感の上に快感を積み上げ、客に理性を保つことを許さなかった。
濃厚な雄の匂いが、“危険な快楽”の花言葉を持つ月下香の香りと交じりあう。
美しく、甘く、そして残酷。
「さあ・・・私が全て吸い取ってあげる」
この島唯一の娼婦は優しく微笑みながら、男を破滅的な快楽へと突き落とした。