第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
一年を通して麗らかな春の気候を誇るこの島にも、太陽の光が届かない場所はある。
小さなホテルの、閉ざされた暗い部屋。
そこでは日々、男達がたった一人の娼婦の前に屈し、喉を反らせながら野獣のような唸り声を響かせる。
「うぅ・・・」
今もまた、若く逞しい男がベッドの上で仰向けとなり、娼婦に快楽神経を揺さぶられていた。
「あぁ・・・! クレイオッ・・・!」
彼は今、自分がどのように愛撫されているのか分かっていなかった。
悶えるペニスに絡みつく蛇、痺れるアナルに注ぎ込まれる甘い毒。
恋人とのセックスでは決して味わうことのできない強い快感が、男を未知の悦楽へといざなう。
「おぉ・・・ああああ!!!」
もはや屈辱といっても良いほどの醜態をさらしながら、そこら中に精液をまき散らす姿を見て、娼婦は紅い唇に笑みを浮かべた。
「もっと欲しい?」
客の太ももの上にまたがり、たわわな乳房越しに見下ろすその顔に慈悲は一切ない。
男の弱点を知り尽くした右手は、的確な動きでオーガズムを誘い出す。
何度も達し、すでに心臓が破裂しそうなのにそれでも“欲しい”と思うのは、まだ彼女の肌に触れていないから。
「クレイオッ・・・クレイオッ・・・! お前が欲しい・・・!」
この美しい淫魔に抗える男など、この世に居はしない。
恋人を抱くため、妻に抱くために残しておいた性欲を全て使い果たしてでも、この娼婦を抱きたい。
懇願する客に優しくキスをしながら、クレイオは肩から掛けていただけのキモノをハラリと落とす。
柔らかな女の身体が露わになると、客の興奮は頂点に達しようとしていた。