第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
ダメだ、やはりナミさんのそばにいてはいけない。
「はは、どうしたの、ナミさん」
「だって、ずっと様子がおかしいじゃない」
やはり目を合わせようとしないサンジに、ナミは不審そうに眉根を寄せた。
「おれはなんともないし、心配いらないよ。今晩はちょっと用事ができて外に泊まるけどいいかな?」
「それはもちろん構わないけれど・・・」
「ありがとう・・・ごめんね」
ニコリと笑うサンジだが、ナミの目にはとても心配いらないようには見えない。
だけど、それを言ったところで、心の内を明かしてくれそうにもなかった。
「ログが溜まったらすぐに出航するから、連絡だけはいつでもつくようにしておいてよ」
「ああ。一緒に居れない代わりに、ナミさんとロビンちゃんには飛びっきり美味しいデザートを用意しておくからね!」
「・・・はいはい」
結局、サンジは仲間全員分の夕食を作ると、一緒に食べることなくサニー号を出て行ってしまった。
冷蔵庫には、二人分の可愛く盛りつけられたデザートが入っている。
「本当にサンジ君・・・大丈夫かしら」
「ん? どうした、ナミ」
モノは同じだが、形よりも量とばかりに大皿に盛りつけられたデザートを口一杯に詰め込んだルフィが、ナミの顔を覗き込む。
「あんた、サンジ君の様子がおかしいことに気づいていないの?」
「サンジ? あいつがどうかしたか?」
「・・・なんでもないわ」
こんな無神経な男に相談してもどうにもならないだろう。
しかし、ルフィはゴクンッと極上のデザートを呑み込むと、ニコリと笑った。
「サンジなら大丈夫だ」
「また適当なんだから・・」
「適当じゃねェぞ。あいつがもし、本当におれ達の助けが必要ならそう言うだろ。仲間なんだからよ!」
「・・・そうだけど・・・」
「それに、サンジなら心配いらねェことぐらい、お前もよく知っているだろ、ナミ!」
ししし、と無邪気に笑うルフィ。
ゾロとサンジに対しては、“非情”とも思えるほどの信頼を寄せている。
同時に、もし彼らに何かあればこの島を粉々にする事すら厭わない、という恐ろしさもあった。