第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「おお~、なんかいい匂いがする! サンジ、飯かー?!」
外から能天気なルフィの声が聞こえてきた。
それにナミの怒鳴り声が続く。
「もう、ルフィ! あれだけ言ったのに、なんで海軍をブッ飛ばしちゃうのよ!!」
「肉食ってるところを邪魔したのはあいつらだ!」
騒ぎを起こす奴というのは、どこにいても騒ぎを起こすもの。
ドタドタとダイニングに入ってきたのはルフィ、ナミ、ゾロ、そしてウソップだ。
「おまけにゾロまで加勢して海軍の大佐を倒しちゃうし・・・! ログが溜まるまで、まだ1日かかるのにいきなり騒ぎを起こしてどうしてくれんのよ・・・!」
「うるせェな、斬っちまったもんはしょうがねェだろ」
「もう、これだからあんた達は・・・」
ルフィとゾロがこの島の海軍をあらかた片付けてしまったのか。
どうりで、この船が平和だったわけだ。
頭を抱えるナミの隣で、ルフィはそんな事などどこ吹く風。
「サンジ、今日の飯はなんだ?!」
「春島の新鮮な野菜と仔牛肉のフリカッセだ。もうちょっと待て、ルフィ」
「なんだかよく分かんねェけど、うまそうだ!! ん、チョッパー、なんか甘い匂いがするぞ。何食ってんだ?」
「な、なにも食ってねェ! こんぺいとうなんて食ってねェぞ、おれは!」
「なにィ、金平糖?! サンジ、おれもそれ食うぞ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
ああ、この騒々しさだ・・・
これが当たり前だから、ホテルの静けさがイヤに響いたんだろうな。
苦笑いしながら鍋をかき回しているサンジに、ナミが歩み寄った。
「大丈夫、サンジ君」
その瞬間、心臓がドクンと鼓動し、抑えていた欲情が込み上げる。