第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「・・・じゃあ・・・」
クレイオはサンジの手をどけながら、口元だけに笑みを浮かべた。
「私に本物の太陽を見せて」
快楽に溺れることが許される闇から生まれ、そこでしか生きることが許されないこの私に。
はたして、貴方にそれができるかしら?
「・・・いったい・・・どういうことだい?」
「不思議だと思わない? 人は、太陽の光が届かない場所だと性欲を剥き出しにするのに、太陽の光が届く場所ではそれを隠そうとする」
セックスであれ、オナニーであれ、強姦であれ、売春であれ、その前の晩にどのような形で欲望を満たしていようが、朝になれば人は素知らぬ顔で町を歩く。
「その太陽が・・・小さな頃からずっと不思議で・・・ずっと憧れていた」
でも、“太陽”は“闇”に打ち勝つことはできない。
そのことも知っているから・・・
「どうせ貴方には無理。だったら、その次に欲しいのは男の性欲」
「・・・・・・・・・・・・」
「この小さな島に、娼婦は私一人しかいない。何故だか分かる?」
濡れた唇は、男を誘惑する言葉しか知らない。
熱っぽい瞳は、男を興奮させる眼差ししか知らない。
「この島の男達の“余計な”性欲は、全部私が吸い取っているからよ」
その微笑みは、邪な心を持つ者を惑わす淫魔のようでいて、性欲に溺れようとする者を戒める聖職者のようでもあった。