第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「し・・・娼婦・・・?」
「どうして意外そうな顔をするの?」
クレイオは微笑みながらサンジの頬を優しく撫でた。
その柔らかい感触に、思わずビクンと身体が反応してしまう。
「私の全ては貴方のような男性を誘うためにあるのよ」
「・・・やめてくれ」
「どうして?」
「娼婦は頼んでいないし、おれは金で女を買うようなマネはしねェ」
必死に平静を装ってはいるが、クレイオの手を払いのけることができない。
このまま身を委ねてしまったらどれだけラクだろう。
どれだけの深い快感を味わせてくれるのだろう、と考えてしまいそうになる。
だけどそれはダメだ。
たとえ相手が“プロ”であっても、自分の欲望で女性を穢すわけにはいかない。
身体を強張らせているサンジを宥めるように、クレイオは柔らかい笑みを浮かべた。
「お金のことなら心配しないで。私は“言い値”だから」
“客の懐具合で値は決まる。金を持っている客には目ん玉飛び出るような高額”
島の男達は言う。
“持ってねェ客には二束三文で服を脱いでくれる”
「全てが終わった後、私との快楽の値段を貴方が決めて」
その値段が、客の有り金全てだろうが、たった1ベリーだろうが構わない。
客の性器から白い欲望を吐き出させることができればそれでいい。
それがクレイオという娼婦だった。
細い指がサンジの胸をなぞる。
強く鼓動する心臓に気づいたのだろうか、娼婦は妖しく微笑んだ。
我慢しないで。
自分を偽らないで。
───誰かを傷つける前に。
「全てを忘れて、気持ちよくなりたいでしょう?」
「クレイオちゃん・・・!」
月下香の香りに誘われ、サンジは堪らずクレイオの両肩を掴んだ。