第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
───この島で女と“イイ事”したけりゃ、クレイオの所に行きな。
酒場に入れば、酔っぱらった男達が口々に言う。
「最高の娼婦だ。3分ありゃ3回は天国にイケるぜ」
さぞ手練手管に長けた高級娼婦かと思いきや、随分と“手頃”な値段で買えるという。
「客の懐具合で値は決まる。金を持っている客には目ん玉飛び出るような高額、持ってねェ客には二束三文で服を脱いでくれる」
生まれながらの“淫女”。
ワノ国のキモノを着崩し、常に妖艶な笑みを浮かべながら街で男達を誘う。
この島の若い男で彼女を知らぬ者はいない。
誰もが一度は彼女に邪な視線を向け、彼女の“商売道具”の世話になった者も多い。
しかし、その素性は誰も知らなかった。
「彼女について分かっているのは名前だけ。この島の生まれなのか、どこぞの島からやってきたのか、それもナゾなんだ」
どこからともなく太陽の下に出てきては、男と共に闇の中へ消えていく。
分かっているのは、彼女を買った男達は皆、裏町のホテルに行くということだ。
「そもそも、誰も娼婦の素性なんて探ろうとしない。知らねェのが一番だ」
深入りして困るのは、クレイオに“世話”になった男達の方だろう。
万が一、自分が彼女の家族か知り合い、友人だと思われたら恥だ。
こちらが楽しむだけ楽しんだら、そのことを言いふらされる前にいなくなって欲しい。
生きていても好都合、死んでいても好都合、男達にとって娼婦とはそれだけの価値だった。