第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「ルフィは何をするか分からないから、私と一緒に行動。ゾロは外出するなら必ず誰かと一緒に行くこと。船番当番じゃない人は自由にしていていいわ」
チャキチャキと仕切るナミに、不満そうな顔をしているのはゾロだけだった。
ルフィはナミと一緒なら肉を食いに行けるとすぐに機嫌を直したが、ゾロは一人で自由に外出できないことに納得いっていないらしい。
しかし、他に誰もナミの言葉に異論を唱えるものはいなかった。
ルフィは一人じゃ絶対に問題を起こすし、ゾロは一人じゃ絶対に行方不明になると知っているからだ。
最初の船番はロビンとフランキーに決まったところで、サンジがナミに歩み寄った。
「ナミさん・・・もしかしておれに気を使ってくれた?」
「なんのこと? あの手配書のおかげで、うちで買い出し係に適任なのはサンジ君しかいないのよ」
「・・・そっか・・・ごめんな、変なことを聞いて。はは、あの手配書がナミさんの役に立てて良かった」
“気付かないフリをしている”ということに、お互い気づかないわけがない。
サンジを気遣って一人の時間を作ってあげたナミ。
ナミが吐いた優しい嘘に信じるフリをするサンジ。
分かっていても、口にしたって相手を困らせるだけだ。
「この先まだまだ長いんだからね。世界政府に喧嘩まで売っちゃったんだから、しっかり航海できるようにしておいてよ」
船の蓄えも、貴方自身も。
「・・・ありがとう、ナミさん」
今、自分の身体がこんな状態でなければ、ますます君に惚れるところだった。
君とロビンちゃんが“安心”して航海できるよう、必ずカタをつけてくる。
タイムリミットは、ログが溜まるまで。
サンジは目前に迫った、美しい春島を見据えた。