第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
時は少し遡り、午前10時のサウザンドサニー号。
「島だー!!」
待ちに待った新たな島に、船首に座っていたルフィは嬉しそうに両手を空に突き上げた。
見たところ、ウォーターセブンのように島全域が市街地となっているから、ワクワクするような冒険は期待できなさそうだ。
それでも数日間ずっと船に缶詰となっていたから、とにかく羽を伸ばしたかった。
「どんなうめェもんがあるのかなー?」
すでにルフィの頭の中は食べ物のことでいっぱい。
すると、チョッパーも手すりから身を乗り出しながら目を輝かせた。
「花のいい匂いがする。春島かなぁ? 桜はあるかな」
「花ぁ? 花で腹は膨れねェぞ、チョッパー」
「でもおれ、本物の桜は見たことないからな。あるといいなぁ」
冬島生まれのチョッパーにとって、“桜”はとても特別な花。
恩人が命がけで愛した花を、もし見ることができるならぜひ見てみたい。
春島に期待を寄せるチョッパーに、ルフィは“ししし”と笑った。
「ここになくても、グランドラインのどっかにはあるさ。必ず見つけような!」
海賊王になるには、この海を制覇しなければならないんだ。
こうやってログを辿っていけば、そのうちに巡り合うはず。
ウソップが夢見ている“巨人国”エルバフ。
サンジが探しているオールブルー。
ナミが描こうとしている世界地図だって、自分が海賊王になれば全て叶うことだ。
ルフィはサニー号のシンボル、“ライオン”のたてがみをポンポンと撫でた。
「新しい船も仲間になったことだしよ、ワクワクするな!」
そう言って、太陽のような笑みを浮かべる船長。
チョッパーも頬を上気させながら、何度もコクコクと頷いた。