第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
それから数分ともたずに、客の我慢は決壊する。
「クレイオ・・・お前は最高の女だ」
快感をまき散らすかのように射精した客は、息が整わないままクレイオの身体を抱きしめてきた。
「さぁ・・・貴方がどれほどの女を知っているのか分からないから、あまり嬉しくはないわ」
「なんだ、拗ねているのか?」
客はクレイオがヤキモチを妬いたと勘違いしたのか、“可愛い奴め”と見当違いのことを言ってきた。
しかし、あえてそれを否定せず、ちょっと唇を尖らせながら頷いて見せる。
「これまで何十人もの女を抱いてきたが、お前は比べものにならない。娼婦にしておくのはもったいないぐらいだ」
「へえ・・・そんなにたくさんの女の人を抱いてきたの───」
その中に愛の無いセックスは何回あったのかしらね。
「もし・・・貴方が抱いてきた女性達の中で私が一番だと思ってくれるなら、また私を“買って”くれる?」
「当然だ。また今晩にでもな」
客は立ち上がると、床に落ちていた衣服を拾った。
それは真っ白なスーツと、「正義」の文字が刺繍された羽織。
「分かっているだろうが、おれのことは・・・」
「大丈夫、お客のことを吹聴するほど私はバカではないわ」
たとえ、海軍本部の将官だろうと、クレイオにとってはただの男でしかない。
「愛しているよ、クレイオ」
そう言いながら太ももの上に置く、数枚の札。
娼婦の愛が欲しければ簡単だ、こうして通いつめて、札束を落とせばいい。
身支度を整えている海兵に、クレイオは冷めた瞳を向けた。