第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
“水の都”ウォーターセブンからログを辿るとその先にある、春島。
小さいながらも一年を通じて温暖な気候、色とりどりの花が咲き乱れることから、“常春の地”と呼ばれている。
この島を訪れるのは旅人や商人だけではない。
毎年アクア・ラグナに見舞われ、水位が上昇し続けている故郷を捨てて、ウォーターセブンから移住してくる者も多かった。
「今日は水水肉が安いよ!!」
「こっちには異国のワインがあるよ!!」
市場を飛び交う、声。
港町では、“水の都”の名物を売る店もあれば、他国との貿易で得た品を売る店もある。
様々な文化が交じりあい、人々には活気があった。
しかし、この穏やかな島にも“闇”はある。
何より、今朝がた一隻の海賊船が寄港したというニュースに、島の人間はざわめいていた。
「麦わら帽子を被ったドクロの海賊旗が見えたそうだ。“麦わらの一味”といえば、船長は3億の賞金首、クルー全員の首にも賞金がかかっている」
なんでも、世界政府の直轄地である"司法の島"エニエス・ロビーを陥落させたという凶悪な海賊だ。
この島にいったい何の用があってきたのだろうか。
数日前に配布されたばかりの手配書に書いてある賞金はとてつもない額だ。
もちろん、首を打ち取ろうというよりも、何もなくこの島を去っていってくれることを誰もが願っていた。
そうやって島が戦々恐々としている中、港町にふわりと月下香の香りが漂い始める。