第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
バタン!!と船室のドアが勢いよく開き、サンジの心臓が軽く飛び出る。
「ションベン、ションベン!!」
「!!!」
不意打ちの音と声に、もう少しで己を握りつぶしてしまうところだった。
サンジが痛みと驚きで涙目になりながら振り向くと、船長が目を擦りながらこちらにやってくる。
「ル、ルフィ?!」
「おー、サンジ。お前もションベンか?」
まだ半分夢の中なのかヨロヨロと隣に立つと、ズボンのボタンを外した。
まさか、ここで用を足すつもりなのか?
「驚かすなよ、ちょっと出ちまったじゃねェか!」
「なんだサンジ・・・漏らしたのか?」
「違うわ、ボケ!」
寝ぼけるのもいい加減にしろ!
出たのはションベンではなくて・・・いや、なんでもない。
「ションベンなら便所でしろ、便所で!」
「いいじゃねェかー。お前だってここでしようとしてるから、ズボン脱いでんだろ?」
何を言っているんだ? と首を傾げるルフィに、言い返す言葉がない。
どこからどう見たって、自分も“今から海に用を足します”スタイルだ。
「ああ・・・そうだな、おれが悪かった。好きにしていいが、頼むから海には落っこちてくれるなよ」
お前のションベン漂う海に飛び込むことだけは勘弁だ。
するとルフィはつまんなそうに唇を尖らせた。
「なんだ、ウソップみてェにどっちが遠くまで飛ばせるか競争しねェのか?」
「お前ら、そんなことやってたのか・・・」
「おー、チョッパーやフランキーもやるぞ! 楽しいから、お前もやればいいのに」
チョッパーはともかく、フランキーまでいい年して何やってんだ。
本物の変態じゃねェか・・・と、フランキーが喜びそうなことを考えながら、手すりの上に立ってズボンを下ろしたルフィに呆れた目を向けた。