第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
しかし、皮肉なものだ。
性的興奮を高めるために女性を利用したくないと思えば思うほど、サンジの身体はそれを嘲笑うかのように時折ひどい悪戯をする。
あれは、精通を迎えた13歳のある日。
朝、異変を感じて目を覚ましたサンジの身体は小刻みに震え、汗でびっしょりと濡れていた。
心臓が飛び出そうなほど胸がドキドキし、同時に下半身に痛みを覚えた。
触ってみると、それは形も大きさも変わっていた。
当時、すでにゼフが開いた海上レストランを手伝っていたサンジは、年上のコック達からそれなりの知識を得ていた。
すぐにこれが男として当然のことだと理解はできた。
しかし、どう考えても、みんなが面白おかしく話すような症状とは違う。
「・・・ハァッ・・・ハァッ・・・」
海上レストランには男しかいない。
好みの女性の裸を想像し、自分を慰めているという仲間に、サンジは違和感を覚えていた。
───おれは、クソみたいな欲求でレディーを穢したくない。
それからサンジは年に数回、奇妙な症状に悩まされるようになった。
日常生活に支障をきたすほどの強烈なオーガズムが、前触れもなく襲う。
たとえば、野菜を切っている最中のわずかな振動や、誰かに肩を軽く叩かれるだけで肉体的な興奮が起こる。
そうなると、症状が治まるまでとにかくマスターベーションをし続けるしかなかった。
それが数時間で治まればよし、そうでなければ・・・
「今回は何日で終わるか・・・」
それまでナミやロビンとは距離を置いていなければ。
強い性的欲求に負けて、もし彼女達に手を出してしまったら、自分を一生許すことはできないだろう。
サンジは火照った身体を押さえつけながら、煙草を吸うために甲板に向かった。