第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)
シャンクスはくるりと態勢を変えると、クレイオと向き合うように座りなおす。
そして、左の乳房の上に右手を置いた。
「お前の“ここ”には、ロジャー船長の生きた証が刻まれている」
トクン・・・トクン・・・と微かに感じる、心臓の鼓動。
「もちろん、おれの中にもロジャー船長が生きた証は刻まれている。だが、お前と違って、それは“永遠”じゃない」
シャンクスの右手がクレイオの乳房から鎖骨、首筋をゆっくりと這い、最後は唇に触れる。
「おれはロジャー船長の生きた証を、次の世代に繋がなきゃならねェ。その代償が左腕一本なら安いもんだ」
穏やかなイーストブルーで左腕を失ったように。
この広い海では、いつ命を失うか分からない。
自由でいるということは、ただ生きることよりもはるかに難しい。
赤髪の男は、想像もつかないほどの膨大な記憶を秘めた女性を、愛おしそうに見つめた。
「ロジャー船長だけじゃない。おれ達の生きた証も、一つずつ、一つずつ、“ここ”に刻まれている」
「シャンクス・・・」
「そして、ロジャー船長の意志を継ぐだろう、次の世代の海賊達の生きた証も・・・」
この美しい女性の心に、永遠に残っていく。
「クレイオ・・・お前は本当に変わらない」
ロジャー海賊団に見習いとして入った少年の目に映ったもの。
それは、今と変わらぬ姿のクレイオだった。