第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)
「私は貴方に初めて会った時、久しぶりに“太陽”を見た気がした」
陽光のように真っ赤な髪を撫で、そこにキスを落とす。
「ロジャーには本当に感謝している」
万物の声を聞くことができる男。
彼だからこそ、時の流れから逃げるように自分自身を世界から隔離していたクレイオを見つけることができた。
何も言わなくてもクレイオの不安と悲しみを理解し、その大きな笑顔で“明日”へと導いてくれた。
そのロジャーが“時代”を託した男、シャンクスもそう。
こうして触れ合うだけで、クレイオの心の中をいとも簡単に読んでしまう。
「ロジャーが私を見つけてくれて・・・私は貴方に出会うことができた」
当時は、まだ幼さの残る赤毛の少年。
今は、その名を知らぬ者はいない隻腕の剣士。
「ロジャーが私に望んだのは、貴方達の声を“残す”こと」
だから、こうしてローグタウンに一人で残っていても耐えられる。
「そして、船長がおれに望んだのは、その声を次の時代に“繋ぐ”こと」
だから、こうしてクレイオを一人残して、世界を旅することができる。
ロジャーの意志によって出会い、ロジャーの遺志によって結ばれることのない二人。
それでも、こうして肌を触れ合わせるだけで、誰よりもその心を理解し合うことができた。