第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
出会いとは不思議なものだ。
たったひとつの出会いが、誰かの人生を大きく変えてしまうこともある。
シャンクスと出会ったフーシャ村の少年。
モンキー・D・ルフィと出会った海賊狩り。
ロロノア・ゾロと出会った“鷹の目”の娘。
ひとつひとつの出会いが、まるでロザリオの珠のように繋がり、そして一つの輪になっている。
「礼には及ばねェよ、クレイオ。おれがお前を助けたのは、おれ自身のためでもあるんだ」
そう言ってシャンクスは、“東の海”の方角を見ながら瞳を揺らした。
「お前は、おれが最も尊敬する男が築いた時代に生まれた命だからな」
ロジャー船長。
あんたがおれに見せてくれた海は、どこまでも果てしない。
“白ひげ”の時代が終わり、新たな海賊達がしのぎを削っている。
その中には、おれがフーシャ村で出会ったガキもいる。
「もし、お前がおれに少しでも恩を感じてくれているのなら・・・ひとつだけ頼みがある」
海面を左右に割りながら進んで行く、竜を模した船首。
時おり上がる波しぶきが、甲板の手すりに小さな水滴の跡を作っていた。
見慣れた海賊船の光景の中で、シャンクスは親友と同じ瞳をした女に、祈りを込めた笑顔を見せる。
「どうか・・・時代をつなげていって欲しい」
これから訪れようとしている新時代・・・
さらにその次の時代の礎となる命を、つないでいって欲しい。
「人間の命には限りがある。だから不幸でもあり、幸せでもあるんだ」
人には必ず死が訪れる。
残された人間は、深い悲しみに暮れるだろう。
しかし、その人間にも死が訪れるから、その悲しみはいつか終わる。
そして、限りあるものだからこそ、人間には命を残すという奇跡が与えられている。
「もし、永遠の命を持ってしまった人間がいたとしたら・・・そいつの不幸も永遠に続くんだ」
その人間の悲しみに終わりはない。
だったらせめて・・・
せめて、希望溢れる時代をいつまでも見せてやりたいと思う。