第37章 遊郭へ
「そうじゃなけりゃそれぞれに能力を分散させて弱い妹を取り込まねぇ理由がねぇ! ハァーッハ! チョロいぜお前ら!!」
「グワハハハ! 成程な簡単だぜ! オレ達が勝ったも同然だな!!」
天元の指摘に伊之助も成程と笑い吠える。
ただ蛍だけは、鬼である兄妹の真意を知っていた為に静かに唇を噛んだ。
もしかしたら戦略的な分立もあったかもしれないが、それが真の目的ではない。
二人でいることに彼らには意味があるのだ。
「その簡単なことができねぇで鬼狩り達は死んでったからなぁ。柱もなぁ、オレが十五で妹が七喰ってるからなぁ」
「そうよ! 夜が明けるまで生きてた奴はいないわ! 長い夜はいつもアタシ達を味方するから!」
そんな真意をわざわざ敵に教える必要は勿論彼らにはない。
指摘されても笑みを消さない妓夫太郎に続き、堕姫が喰らい付く。
「どいつもこいつも死になさいよ!!」
先に動いたのは堕姫だった。
鋭利な帯をぎゅるぎゅるとうねらせ天元と炭治郎に襲い掛かる。
ドドンッ!!
広範囲を得意とする攻撃を止めたのは、雷のような轟音を響かせた足鳴りだった。
「善逸!」
炭治郎の声が響いた時には、その人影は閃光となり堕姫に衝突していた。
そのまま天井を突き破り、暗い夜空へと飛び出す。
「ミミズ女はオレと寝惚け丸に任せろ! お前らはそのカマキリを倒せ! わかったな!!」
「伊之助…ッ気を付けろ!」
続いて日輪刀を構え、伊之助が夜の闇へと飛び出していく。
分断して各々で悪鬼を叩く作戦だろう、それを妓夫太郎も見越していたが敢えて追うことはしなかった。
じっと暗い夜空を見上げ、不意にギザギザの歯を歪ませ嗤う。
「妹はやらせねぇよ」
まるで姿を消した善逸と伊之助が見えているかのように。