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嫉恋

第15章 砕氷の時




鬼道は肩を竦める。鬼道は花織と春奈に対しては殊に過保護である。朝食の時、花織の姿が見えなかったから自分が朝食を食べるよりも先に花織を探しに来たのだ。特に花織は何かと危険な目に遭いがちだから目を離すことが不安なのだ。花織は鬼道のその答えに少し申し訳なさそうな顔をした。

「あ、ごめんなさい。じゃあ一緒に食べましょう、鬼道さん」

携帯電話をポケットに仕舞いこみ、鬼道の隣に立つ。どちらともなく歩き始めながら花織は鬼道に笑い掛けた。

「鬼道さん、この間大海原中の音村さんとお話していた、リズムサッカーについて教えて頂けませんか?」
「ああ、構わない」

鬼道は花織の表情を見ながら優しく微笑む。風丸がキャラバンを去る前のいつも通りの花織だ、と感じられた。そんな花織が無性に愛おしくて鬼道は何も言わずに花織の髪に手を伸ばす。

「き、鬼道さん、どうしたんですか?」

鬼道が髪を撫でれば花織が慌てた様に声を上げた。鬼道はフフ、と彼女の反応に笑みを零す。花織は笑っている方がいい、そしてこんなふうにコロコロ表情を変えているのも愛らしい。久々に見る表情に鬼道の胸はときめく。

「何でもないんだ」

鬼道は明るく笑う花織を見つめる。何度でも鬼道は思う、帝国に居たころからずっと変わらない気持ち。俺はこの女が好きだ、どうしようもなく好きだ。だからいつだって彼女の傍にいて、彼女を守る。……誰よりも絶対に。

俺なら、もうお前を泣かせたりしない。

この頃、ずっと悲しそうに笑う彼女を見ていて何度も言ってしまいそうになった言葉。弱りきっている彼女を揺さぶろうとする卑怯な言葉。それをもう告げる隙すらないことを鬼道はこの微笑をみて感じるのであった。
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