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嫉恋

第14章 喪失の余韻




吹雪は練習の話題が出ると少し表情が硬くなった。花織は荷物を纏めていてそれには気づかない。……チームの皆は本当に"士郎"を望んでくれているだろうか。花織だって実際を知れば"士郎"を望んでくれないだろう。チームで必要とされているのはフォワードのアツヤの力。ディフェンダーの士郎の力は必要ないのだ。シュートを決めるのが自分の役目、キャラバンに参加した時からの吹雪士郎の役目だから。

「そうだね、僕がんばらないと」

倒れる前は花織に打ち明けようとしていた話、あの試合の後は誰にも話したくなくなってしまった。あの試合でチームの皆の声が聞こえた、アツヤにボールを繋ぐのだと。花織にすべてを話しても花織にも求めているのはアツヤの方だと言われたら自分が壊れてしまうと思う。

「病み上がりだから無理しないでね。何かあったら相談に乗るよ」
「ありがとう、花織さん」
「ね、士郎くん」

花織が吹雪のことを見つめる。その瞳はいつもより大きく見えて、何かを堪えているようで吹雪は胸が締め付けられるような感覚に襲われる。彼女の微笑みは優しくていつも温かいのに、最近の彼女の笑顔を見ると息苦しさに襲われてしまう。

「しばらくは心配だから士郎くんの傍にいてもいいかな……」
「え?」

吹雪は思いもしなかった提案に首を傾げた。仮にも彼女は風丸と付き合っているわけだし、吹雪の傍にこれ以上いることを望まないと思ったのに。

「うん、ありがとう」

とにかく拒否はせずに礼を言っておく。吹雪にとっては花織が傍にいてくれるのは願ったりかなったりのはずだった。花織はありがとう、といってひとまず安堵したように笑う。その微笑もやっぱり何か自分の欲しい花織の笑顔と違っていて。

花織が自分に向かって笑っている、僕だけを見つめて。望んでいた事なのに何故か凄く胸が痛くて堪らない。

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