第12章 心の均衡
***
瞳子の言葉の余韻が残る病室に、選手たちは立ち尽くしていた。吹雪は目を覚まさない。チーム全体に嫌な空気が漂っている。円堂が悔しげに拳を握り、床頭台を叩いた。
「何で気づけなかったんだ……。あの時俺が気づいていれば、こんなことにはならなかったんだ……!!」
円堂が己を責めはじめる。花織は何も言えなかったが、円堂に非があるというなら自分にはもっと非があると思った。自分は知りながら吹雪の悩みを放置していた。気付いていたのに、ちゃんと話を聞けなかった。花織が自責を感じて顔を背ける。その身体を何も言わずともしっかりと鬼道が支えた。彼には花織が何を思っているのかお見通しのようだった。
「やめろ!お前のせいじゃない!」
「でも!!俺が気付いてれば!!」
食い下がる円堂に鬼道が遮るように言う。
「これは、お前のせいでも花織のせいでも、ましてや監督のせいでもない。俺たちチームの問題だ!」
「チームの……?」
一之瀬の言葉に鬼道は頷いた。凛とした態度で彼は話し始める。
「俺たちはエターナルブリザードに頼りすぎていた。吹雪にさえつなげば点を入れてくれる。吹雪にとってそんな思いが、かなりの重圧になっていたに違いない」
鬼道の的を射た言葉はチームの中に浸透していった。円堂が吹雪、と彼を呼んで彼の表情を見つめる。彼は今も苦しげに眠っている。
「戦い方を考え直すべきかもしれない、吹雪の為に。そして俺たちがさらに強くなって、エイリア学園に勝つために!」
鬼道の言葉はチームメイトを奮い立たせた。次々に鬼道の意見に賛成する声が上がる。花織も少し鬼道の言葉に救われた。今までのことを悔いるのではなく、これから彼の為に何ができるかを考えよう、そう思えるほど心に余裕が生まれていた。
そしてようやく、花織は気が付いた。
自分の最も大切な人の姿が、この病室のどこにもないことに。